世界最大の火山マウナロアに登ろう!


(夕焼けのマウナロア)

ワイ島には三つの世界一の山が三つあります。ふもとから頂上までがエベレストより高いというマウナケア山(4205m)、世界一活動が激しい火山のキラウエア、そして今回紹介する世界最大の活火山マウナロア山(4170m)です。マウナロア山の登山は、ほとんどの観光ガイドには載っていません。しかし、世界中の4000m以上の高山に比べれば、日帰りで登れ、かつ、月世界にも例えられるような壮大無比な風景を見ることができます。2006年夏に事前調査し、登山した経験に基づき、マウナロア山への日帰り登山の準備、アプローチ、ルートを紹介します。



予備知識編

マウナロアとは?
ワイ島の中央南側に聳える標高4170mの活火山です。典型的なアスピーデ(楯状)火山のため、傾斜が少なく、標高の割には高い山に見えません。観光地化されていないため現代ではあまり有名ではありませんが、古くはハワイ諸島でもっとも有名な火山でした。その容量は火山としてはダントツに世界一で富士山の30倍以上の容量があると言われています。マウナロアはハワイ語で「長い山」という意味です。


(上の立体地図写真の上がマウナケア、下のマウナロアの大きさが分かるはず)

マウナロアへ登る方法
徒歩での登山のみ可能です。マウナロアへの登山道は、大きく二つあります。南東、キラウエア火山側から登るマウナロア・トレイルと、北西サドルロード側から登るオブザーバトリ・トレイルです。本解説では、日帰りで登山できる、マウナロア気象観測所を起点としたオブザーバトリ・トレイルを使ってマウナロア頂上を目指すコースを紹介します。

マウナロアへ登る際の届出
マウナロア山の山頂付近はハワイ火山国立公園の一部です。国立公園の中で一泊する場合には、事前にキラウエアにあるハワイ火山国立公園のビジターセンターに届ける必要があります。日帰り、または、国立公園外で泊まる場合の届出は不要です。しかし、ハワイ島では決められた場所以外でのテント泊は許されていません。出発地の駐車場は国立公園外のため、車中泊するのは可能で届け出も不要です。

標高、距離
出発地点マウナロア気象観測所が標高3370m、マウナロアの最高地点が4170mと標高差800m。丁度、中間点が富士山頂の標高といった高地での行動になります。ただ、距離は片道10km、往復20kmです。途中、施設は何もありません。

健康の注意
高地での行動になるため、高山病の兆候が現れた際にはすぐに下山が必要です。また、24時間以内にスキューバダイビングをした人は登山禁止です。シュノーケリングはOKです。

マウナロアの気象
海岸近くよりも20〜25℃低い気温を見込んだほうが良いでしょう。冬は雪が積もっている場合もあります。また、風をさえぎるような林や山はありません。強風が吹き荒れる場合もありますので、体感温度はさらに低く感じる場合があるでしょう。ただし、夏で風が弱いときには昼間になると暑くなることも覚悟したほうがよいと思います。天気の日は日差しが強烈ですので、頭を覆うものは必要です。



アプローチ編

マウナロア気象観測所までの交通
大手旅行社のマウナロア登山ツアーはありません。アプローチは自家用車またはレンタカーを使うしかありません。レンタカーは、保険の対象外ですので、万一事故が発生しても保険が利きません。マウナケアの場合、地元のレンタカー会社ハイパー社は保険適用するらしいですが、マウナロアにも適用されるかどうかは未確認です。ただ、保険が効かないからといって法律的に運転が禁じられているわけではありません。自己責任で事故が無いように運転する必要があります。

登山開始地点(マウナロア気象観測所)までのアプローチ
マウナロアを西海岸、コナやワイコロアからアクセスする場合、山側を南北に走る119号線の7マイル〜6マイル地点でハワイ島を東西に横断するサドルロードに乗り換えます。この地点までコナからは119号線を北上し約45分、ワイコロアからはワイコロアロードと119号線を使って30分弱かかります。ここから先の道は、レンタカーの保険対象外ですが、しばらくは良い道が続きます。次第に、道幅が狭くなりますが、日本の山道に比べれば十分な広さです。ただ、道路の真ん中付近はきれいに舗装されていますが、道の両端が凸凹のためしっかりハンドル操作をする必要があります。また、途中、上下に道がアップダウンするところがあるので注意。ここでは、頂上付近での正面衝突と、谷付近の道路が狭くなっている部分の注意が必要です。サドルロードは、急カーブはほとんどありませんが、35マイル付近のスピードが出やすいところで直角にまがるところがありますので、ここも注意が必要です。サドルロードを20分位走るとアア溶岩で覆われた溶岩原の高地につき、しばらくすると、28マイル付近で左側にマウナケア山頂に向かう道路、右側に大きな駐車場(プウ・フルフルという小墳丘のハイキングコース)がでてきます。この先400mほど行ったところで、右側にマウナロアへ向かう赤茶けた小道があります。標識はありません。夜、運転する際には、真っ暗闇の場合があり、見逃す危険性がありますので、スピードは控えめにマイル表示を気をつけて走ってください。このT字路が丁度標高2000m、ワイコロアから約72kmです。

ヒロ側からサドルロードに乗る場合、ヒロ市内から新しい2000号線で一本です。サドルロードのヒロ側は、コナ側のような凸凹や、上下で視界が悪いようなところはありません。ただ、ハワイ島の他の幹線のような広い路肩はなく、ヒロ側も高速で走っている車が多いので、注意は必要です。ヒロ市内から50分くらいでマウナロアへの登山道入り口まで行くことが可能です。


(溶岩原の中を曲がりくねって見えるのがサドルロード)

もう一本、ヒロ市内からStainback Highwayという道でマウナロア気象観測所まで一本で登る道が地図上にありますが、どのような道かは確かめていません。サドルロードのヒロ側は整備されているため、サドルロード部分は、2000号線を乗るほうが安全で速いと思われますが、サドルロードから、Stainback Highwayからの道と合流するまでが、あまりにひどい道なので、Stainback Highwayを延々登ると言う選択肢もあるかもしれませんが、多分、リスクはさらに大きいでしょう。


(サドルロードからマウナロアへ登る細い道。先に見えるのがマウナロア)

サドルロードからマウナロアへ登る道は、約29kmの一車線道路。一応舗装されていますが、特に最初の3,4kmは舗装がはがれた穴ぼこの補修がほとんどされておらず凸凹のひどい道。ただ、穴ぼこをよけすぎると、周りの溶岩にぶつかる危険性もあり、4WDで車高が高ければ、気にせず、低速で穴に入ったほうが安全かもしれません。道幅は車がすれ違えないほど狭くはありません。ただ、両側は溶岩が迫っているところもあり、安全のためにも道の真ん中を走ったほうが無難です。一車線の道ですが、途中から、道の真ん中に頼りないペンキの線が引いてあります(この線はガイドブックにも書いてあり、有名ですが、サドルロードから入ってしばらくは無いので注意)。サドルロードから3kmくらいのところから道路の穴が埋められていて、良い道に変わります。13.6km行ったところで、ヒロ方面から登ってくるStainback Highwayの先の道との合流し、右に大きく曲がります。ここが標高2560m。そこからは電柱が道の脇を通っています。サドルロードから一時間ほど登ったところで、前方に観測所の赤いランプが二つ見えるようになり、最後に中央線が消え道路の色がレンガ色から灰色のコンクリート道で良くなって、2,3回上下に大きく振れたところが終点、マウナロアの気象観測所の近くにある駐車場です。最後の部分、急に道が良くなりますが、上下のアップダウンが激しいのでスピードに気をつける必要があります。

マウナロアのオブザーバトリ・トレイルの起点となるこの駐車場は3,4台しか止まれない小さな駐車場です。ワイコロア・リゾートからだと、ほぼ100km。2時間半は見ておいたほうが良いでしょう。



マウナロア登山

下記、執筆中。

登山道概要

オブザーバトリ・トレイルはマウナロアの中では一番急斜面につけられたトレイルですが、日本の登山道に比べれば傾斜はゆるいと言って過言ではありません。片道10kmで標高差800mという傾斜は、日本でいうと、箱根ターンパイクといった自動車道の傾斜と同様です。しかし、標高4000m前後の登山のため、油断は禁物です。今回するコースは、一番お手軽なコースですが、山慣れをした人で、高山病にかからないことを条件に往路5時間、復路4時間は予定に入れておいたほうが良いでしょう。速い人であれば往復8時間未満でも可能でしょうし、体調が悪ければ、12時間以上かかっても不思議ではありません。


(オブザーバトリ・トレイルの概念図)

駐車場から、マウナロア気象観測所に登る道と、登山で使う下る道がT字路のようになっています。登山で使う道も約700mくらい舗装されていないジープ道に沿って進みます。オブザーバトリ・トレイルの始点を示す標識があるところで、左折で、ジープ道とはお別れです。ここからは、明確なトレイルがなく、パホエホエ溶岩の上のケルンを目印に登ります。


(マウナロアのケルン。地形図にはBM(ベンチマーク)と書いてあります。)

オブザーバトリ・トレイルはマウナロア山としては急な斜面に道がつけられています。しかし、日本の山道に比べれば大した傾斜ではありません。ただ、慢心は禁物。高度があるのであまりスピードは出さず、最初のうちは一歩一歩踏みしめて登ったほうが良いでしょう。最初の2kmくらいは明確な登山道は無く、ところどころに立てられているケルンを目印にパホエホエ溶岩の上を思い思いに歩いていきます。左手後にはマウナケアが雄大に見えます。また、右手にはフアラライ山の頂上の墳丘群がきれいに見えるはずです。さらに、天気が良ければ、マウイ島ハレアカラ山までハワイ島の延長のように見えるでしょう。新旧道の分岐までの道にあるケルンは旧道や山頂付近のケルンよりも大きめですので道に迷う危険は少ないと思います。


(岩屋のようなところ)

**kmのところに、溶岩トンネルが半分陥没したようなところ(日本で言う岩屋に近い)があります。ここで、新道と旧道に分かれますが、標識やケルンに沿って普通に歩くと新道に入ります。しばらく、登ると登山道が左に折れ、しばらくはジープ道に沿って歩きます。


(左に折れるときの標識)

このとき、右手に尾根のようなものが見えますが、これは小クレーターです。ゆるい斜面を**m行くと、ジープ道から登山道が分かれます。オブザーバトリ・トレイルはほとんどが、溶岩流の上を歩きますが、ここの部分は細かい砂利、それもグリーンサンドビーチと同じカンラン石の岩や砂が広がっています。砂利の上のトレイルなので踏み跡が残り、道を間違えることはありません。(GoogleEarthの衛星写真でも微かに登山道が見えることを帰ってから確認しました。)緑の砂は、肉眼ではきれいに見えたのですが、写真にはうまく写りません。この道は、少々急ですが、クラックの脇を通っており、クラックから出てきた(?)小石や砂があります。また、石も金色に輝いていたり、青く輝いているような石もあり近づいてみてみるとかなりきれいです。**m登ると、ジープ道を横切ります。本来のコースは、このジープ道を突っ切って、頂上クレーターの淵にあるノースピットまで直登する道ですが、ここでは、頂上へのショートカットとして、このジープ道を右折します。この道は、USGSの地形図では、ノースピットトレイルと書いているトレイルでこの高さとしては、非常に整備され、歩きやすい道です。しばらく、ほとんど傾斜の無い道を頂上に向かいます。本来のコースはノースピットからノースピットトレイルとは並行につけられているサミットトレイルを頂上に向かう道ですが、ケルンも小さくて見難く、また、左右にアップダウンしながら登る道なので、時間の余裕が無い人はノースピットトレイルのほうが安全だと思います。ノースピットトレイルに入って**km歩くと、右側から、オブサーバトリトレイルの旧道が合流します。50mくらい同じ道をいき、そこから旧道はクレーター方向左手に別れていきますが、このままノースピットトレイルを直進します。段々、傾斜が急になってきて、道も悪くなってきます。丘のように見えるところの上に小さなアンテナのような人工物が見えてきます。ここが、旧気象観測所です。ノースピットトレイルはここで終点で、明確なトレイルはありませんが、ハポエポエ溶岩の上を通って、慎重に頂上カルデラを目指しましょう。サミットトレイルは、とにかく歩きにくいので、旧気象観測所から斜めに頂上方向にショートカットしたほうが楽でしょう。

頂上カルデラの淵にたどり着けば、あと**km。雄大な頂上カルデラモクアウェオウェオをここで始めてながめることができます。溶岩湖だったところは深緑に見え、平面なので上からだとカルデラ湖のように見えます。

ここから、サミットトレイルをたどります。地図上は、カルデラにそってトレイルはまっすぐ書かれているのですが、実際には、30m位の単位で左右に曲がっています。理由は、登山道として不適なアア溶岩流を避けるまたは一番細いところを渡るためなのですが、そのたびに、少し下っては登るという繰り返しになり体力を消耗します。*km約**分で、頂上に到着です。


(頂上のケルン)

頂上だという標識はありませんが、ひときわ大きなケルンがあり、その先にはケルンがありません。頂上は、頂上カルデラのすぐ脇に立っていますので、落ちないように気をつける必要があります。


(マウナロアの頂上カルデラのモクアウェオウェオ)

下りは、時間と体力に余裕があれば、サミットトレイルを降りてもよいですし、帰りもノースピットトレイルを使う手もあります。ノースピットトレイルは、旧気象観測所の先からありますので、よく確認して降りましょう。サミットトレイルからだと、ときどき、ノースピットトレイルの道が見えます。

帰りは、オブザーバトリ・トレイルの旧道を降りるか、登りで使った新道を戻るかを選べます。オブザーバトリ・トレイルの旧道はケルンが小さく、アア溶岩を避けて、右へ左へと曲がるので、あまり頭を使いたくないという人は少々遠回りですが新道を降りたほうが良いでしょう。旧道を降りる場合、ケルンは小さいのですが、道の方向に黄色いペンキがたらしているところがあるので、これも参考にするとよいでしょう。

オブザーバトリロードの新道と旧道の合流点まで来ると、すぐ近くに気象観測所のアンテナが見えますが、ここからが、かなりの距離があるのであせらないことです。しばらく、気象観測所の方向に向かっておりますが、そのうち、左へ左へと曲がって、実感としては、ずいぶん左側に遠回りをしてから戻ってきて、駐車場に戻ります。

帰りの道はエンジンブレーキを利かせて慎重に降りましょう。アメリカのガイドには、エンジンオイルの蓋を開けると良いと書いてあり、試してみましたが、車によっては、ガソリンメーターが減ったように表示されるので気をつけましょう。